目次から探す

学び直したくても、仕事が終わるころには時間がない。そうした悩みに対し「自分で勉強時間を作る」だけではなく、職場の制度を見直す選択肢があります。厚生労働省が2026年7月31日に公表した令和7年度能力開発基本調査では、教育訓練休暇制度を導入している企業は5.7%。教育訓練短時間勤務制度4.7%、教育訓練所定外労働時間免除制度4.6%でした[1]。これらは労働者の取得率ではなく、企業が制度を導入している割合です。制度があることと、労働者が実際に利用できることも区別する必要があります。

教育訓練休暇・短時間勤務の導入状況を比較

本文で扱う統計・制度の違いを比較します。割合を使う場合は分母と調査対象を取り違えないでください。これは編集部が一次資料を整理した比較です。

企業における仕組み導入割合意味
教育訓練休暇制度5.7%休暇制度を導入した企業
教育訓練短時間勤務制度4.7%訓練のための短時間勤務制度を導入した企業
教育訓練所定外労働時間免除制度4.6%学習目的の所定外労働時間免除制度を導入した企業
学び直しの入口を見極める

まず確認すべきなのは自分が学べる条件? それとも職場が提供する機会?

01個人の条件

利用できる時間・費用・受講要件・目的を確認する。

02職場の条件

制度・研修対象・支援・学習内容の実務への関連を確かめる。

調査の平均や制度の名称だけで、自分の利用可否を決めない。

制度の導入率は何を測っているのか

厚労省調査は、常用労働者30人以上の企業を対象とした企業調査です。教育訓練休暇制度5.7%は「企業に制度がある割合」であり、「5.7%の労働者が教育訓練休暇を取得した」わけではありません。調査対象企業は7,452社、有効回答率52.6%。2025年10月時点の状況を尋ね、2026年7月に公表しました[1]。

導入率は前年調査より1.8ポイント低下しました。これは調査間の差であり、個々の企業が制度を廃止した件数ではありません。休暇制度に加え短時間勤務制度や所定外労働時間免除制度も比較することで、単一の休暇だけでなく学習時間を調整する複数の方法があることが分かります。

なぜ企業が制度を導入しないのか

JILPTの『ビジネス・レーバー・トレンド』2026年10月号は、厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査を詳しく紹介しています[4]。教育訓練休暇制度について「導入していないし、導入する予定はない」と回答した企業は85.4%でした。短時間勤務制度については86.2%、所定外労働時間免除制度については86.4%でした。

これらの制度を導入する予定がない企業に理由を尋ねた複数回答では、いずれも「代替要員の確保が困難であるため」が最も多いという結果でした[4]。企業に研修の必要性を訴えるだけでは、現場の人員配置という課題を解消できない可能性があります。ただし、これは企業が挙げた理由の集計であり、制度導入の有無を決める因果効果を測定したものではありません。

例えば小規模な職場では、研修日の業務分担と代替要員の準備を含めて制度を検討する方が、休暇取得を本人任せにするよりも現実的かもしれません。これは統計から着想した編集部提案で、効果が実験で確認された方法ではありません。

OECDが示す学習時間の問題

OECDの2025年『Trends in Adult Learning』は2023年の成人力調査を分析しました。希望する学習に参加できなかった人が挙げた最大の障壁として、仕事・家庭の時間不足はOECD対象国平均48%で、日本では60%以上でした[2]。これは成人全体の割合ではなく、希望した学習に参加できなかった回答者を分母とします。

OECDは政策の選択肢として訓練休暇や学習提供の柔軟性を取り上げています[2]。ただし、特定の制度の導入が日本で何ポイント参加率を上げるかを、この数字だけから計算することはできません。

教育訓練休暇と助成金を混同しない

企業が設ける休暇等の制度と、国が企業へ支給する人材開発支援助成金は別の仕組みです。厚労省の『教育訓練休暇等付与コース』は、要件を満たす有給教育訓練等制度の導入と労働者の制度利用・訓練受講などに対する事業主向け支援です[3]。

助成金が存在するから全事業主に必ず支給されるわけでも、個人が直接受け取れるわけでもありません。対象制度、支給要件、計画届、期限は改正されます。2026年8月3日版の情報が掲載されている公式ページを基準に、人事担当者と管轄労働局が最新条件を確認してください[3]。

労働者と企業が具体的に確認する順番

働く側は、就業規則や社内研修案内で「教育訓練休暇」「短時間勤務」「勤務時間内研修」「受講費用補助」があるかを別々に確認します。会社に制度がなくても、研修日を固定する、短時間の演習枠を設けるなど相談余地がある場合もあります。

企業側は、対象業務と必要技能、研修の時間・費用、受講後に実務で試す機会を一体として設計するのが一案です。ここで挙げた順番は編集部提案で、制度導入による効果を実験で実証した手順ではありません。

休暇制度のない職場でできる確認は

教育訓練休暇制度を導入している企業は5.7%という結果でしたが、休暇制度以外にも勤務時間内の研修や学習費用の補助があります。「休暇制度がない=学び直しの機会がない」という意味ではありません。

困っていること最初に確かめること注意点
まとまった休暇を取れない短時間勤務・所定外労働の免除・勤務時間内研修導入率は労働者の取得率ではない
講座費用が負担になる職場の補助と公的な給付・助成制度企業向け助成金は個人が直接受け取る給付ではない
学んだ内容を仕事で使えない業務に近い演習・成果物・職場での試行講座修了と技能の定着は別

繁忙期に一日研修が難しい職場なら、短時間の分割受講や担当業務に結びついた演習を相談する方法も考えられます。これは編集部の提案で、制度利用や学習効果を保証するものではありません。

費用については教育訓練給付金と企業向け助成金の違いも参照できます。

学ぶ前の3つの確認

統計や公的制度を、実際の学習計画へ落とし込むには、自分の条件を具体的にする必要があります。以下は編集部の整理であり、公的機関が効果を保証した介入方法ではありません。

職場と個人の条件をそろえる
  1. 01目的を明確に

    できるようになりたい作業を一つ選ぶ。

  2. 02利用条件を確認

    公式情報や職場の規程で対象・期限・費用を見る。

  3. 03小さな成果物へ

    架空の題材で試し、必要な支援を具体的に相談。

LEARN SHIFT編集部の実践提案。制度利用・学習成果を保証するものではありません。

関連する記事は、公開されたものから本文や関連記事に表示します。

日本の社会人が学び直しに参加しづらい理由では、ここで触れた論点を別の角度から詳しく扱っています。

学習を始める前に、教材の選択肢も考える

学習を継続する方法を具体的に考えるなら、Courseraで効率よく学ぶ方法も参照できます。サービスを利用しなくても、学習計画と振り返りの設計は参考になります。

有料講座を申し込む前に、目標と必要な演習、利用できる費用を整理しましょう。無料の公式教材で足りる場合もあります。

参考文献・出典と資料の限界

公的機関の公開資料を2026年10月14日時点で確認しました。調査年・集計対象・申請要件は一致しません。記事中の活用例は編集部による提案として統計の記述と区別しています。

  1. 厚生労働省(2026年7月31日)「令和7年度 能力開発基本調査」。原典

  2. OECD (2025), Trends in Adult Learning, chapters 3–4. 原典

  3. 厚生労働省「人材開発支援助成金」教育訓練休暇等付与コース。原典

  4. JILPT(2026)「教育訓練投資額は『人材開発支援助成金』の受給企業が非受給企業を上回る」『ビジネス・レーバー・トレンド』2026年10月号。原典